石上神宮フォトログ 山の辺の杜から
2018.07.19
明くる東雲(しののめ)
テーマ:境内

 

高温で多湿の夜がやっと過ぎ、東の空がわずかに白みはじめると、神様に御饌(みけ・食物のこと)を奉(たてまつ)る朝御饌日供祭(あさみけ

にっくさい)が始まります。

直前に開けた楼門の前にはすでに賽銭が置かれてあって、真夜中の参拝であったのか、或いは朝の明けるのを待ちかねてのお詣りであった

のかも知れません。

只今の時刻は午前4時30分、当地の日の出は午前5時頃なので、まだ周りは少々薄暗く、人の姿も見えません。

この心落ち着く静寂(しじま)の中、遠くより鶏の鳴く声が聞こえてきて、自然との一体感が高まります。

例年はこの時間帯が、最も過ごしやすく、三文の得が実感できる唯一好きな時だったのですが、今年は異状に蒸し暑く、むしろご奉仕して

いると汗ばんできます。

これから先、日中が思いやられます。「命にかかわる危険な暑さ」と報道されていますので、皆様もくれぐれもご用心の程を。

2018.07.16
滴り手水鉢(したたりのてみずばち)
テーマ:境内

 

連日35度を越える日中は神宮の森も暑く、ご婦人たちは日傘をさして来られ、社務所から見ていてもカンカンと照りつけるお日様の酷熱

が傘から伝わってきます。

神宮周辺の青田は、日々稲が大きく成長し、もうすでに山も空も映さなくなり、一面青々となって見た目にも暑苦しい感じです。

唯一涼しげに見えるのは「布留社」とハッキリ刻名された手水鉢で、青竹の口から滴り落ちる水音や濡れて光る鉢面は水々しく暑さで焦げ

た心を癒してくれます。

どうぞ日中は緑蔭をつたってお越し下さい。

2018.07.13
夏衣(なつごろも)
テーマ:境内

一般に和服の衣替は、10月から翌年の5月までは裏地のついた袷(あわせ)、6月・9月は裏地のない単衣(ひとえ)、最も暑い7・8月は

薄(うす)ものとなっています。

平安時代には4月1日と10月1日は更衣(ころもがえ)をすることになっていました。あわせて室内の調度も改めていました。

神職も暑い時期になると、薄物の装束となり、狩衣は裏地なしで、袴(はかま)は絽(ろ)と言って、少し透(す)けているものとなります。

足袋(たび)も内側にネルのついたものから、晒(さらし)のものになります。

特に絽の萌黄(もえぎ・薄青色)の袴は殿内の階段を昇降する時など光が透けて、いかにも涼しげな感じがします。

昔は自然の巡りに合わせて、なるべく快適に過ごせるように衣裳を替えて調節していましたが、現代はエアコンなどで身の廻りの自然をか

えて生活するようになりました。

自然と随分かけ離れた生活、この先地球はもつのでしょうか。

 

2018.07.11
蜘蛛の囲(くものい)
テーマ:境内

 

蜘蛛の糸、巣をこのように表現、特に俳句では夏の季語となっています。

ちょうど梅雨が明けて、境内に棲む昆虫たちも動きが活発になり、昼間はまだ聞こえてきませんが、朝夕はヒグラシが鳴き出して、本格的

な夏の到来となっています。

毎朝に社殿の各所のふきそうじをすることになっていて、この時期毎回同じ所で蜘蛛の囲にかかって、不快な思いに陥ります。囲は特に新

鮮なため糸が粘り気強く、きれいに取るのがかなり面倒です。

毎朝かかってしまい、いい加減に学習すれば良いものを、どうも年のせいか、朝は特にボンヤリしているのか、悩むこと頻りです。

それでも露などが糸に絡んで、差し込む朝光を受けて、美事に輝いているのを見ると自然が造り出す息を呑む美に憎さを忘れて感動しま

す。人はみなげんきんなものです。

2018.07.08
朝風に風蘭匂う
テーマ:境内

 

3日間降り続いて、やっと雨音なしの朝を迎えました。

西日本を中心とした記録的豪雨、平年7月の倍を超す雨量で、被害甚大、心が痛むばかりです。

雨上がりの境内にすごく気持ちのよい香りが漂ってきました。その香りの主は樹上に咲く風蘭(ふうらん)の放つ匂いで白い花がかすかに見

えています。

富貴蘭(ふうきらん)とも呼ばれ、江戸時代には観賞用に栽培が大流行して、大名、富豪が好んで育て、参勤交代の時には麗しい香りがある

ことより、防臭をかねて、駕籠(かご)の中につるしたと言います。

書物にはいずれも微香と記されていますが、体験者にはとても微かとは思われない芳わしい香りの広がりがあり、今日の沈んだ心を少々軽

くしてくれます。

1日も早い復興と平常の生活を祈っています。