石上神宮フォトログ 山の辺の杜から
2019.03.19
蕗の薹(ふきのとう)
テーマ:境内

 

蕗の薹の薹とは、アブラナ・フキの花茎(つぼみ)を指すらしい、また塔の意味もあると言い、あの少々ほろ苦いつぼみのことです。

すでにとうが立ち、食に貪欲な皆様がすぐ思い浮かべるのは、天ぷらや味噌炒めなど食べるものだと存じます。

春の到来を最も如実に教えてくれる山菜で、神宮周辺でも生育しているので、毎年今頃になると春の発見を楽しみにしています。

今年は2、3日油断していたので、すでに姿を現わし、若草色が新鮮でいかにも只今出現中と言った風情(ふぜい)です。

数少ない我が国原産の野菜の一つとありますが、『万葉集』には出てこないので、当時は関心がなく、これの栽培は奈良・平安時代となる

のでしょうか。

各種ビタミンやカリウム、カルシウムなどミネラル多く、食物繊維も豊富なので、お通じに効果的とか。

これを具にした味噌汁を常食すると、スタミナがついて、喉に良く、整腸・浄血作用が大いにあるとは言いませんが、期待できるそうで

す。

皆様も特有の香り、ほろ苦さとともに春来るの季節感を味わってみてはいかがですか。⑤

2019.03.13
紅匂ふ桃の花(くれないにおうもものはな)
テーマ:境内

熱心な崇敬者の方から神様にご奉納いただいた和歌山県桃山町の桃が咲いてきました。

この町名は桃の栽培にちなんで命名され、川の台地では江戸時代からすでに植えられていて、周辺に広がり有数の生産量を誇っています。

桃は外来とされていますが、弥生時代の遺跡からその種が見つかっていて、随分古くより育てられています。

『万葉集』にも桃が出てくる歌は11首もあって、『古事記』では桃の実は呪術的な取り扱いとなり、『日本書紀』では、おめでたいしる

しとして登場しています。

「春の苑 紅匂ふ 桃の花 下照る道に 出で立つ少女」(集19-4139)、これは大伴家持が天平勝宝2年3月1日、今の暦では4月

11日の夕暮れに赴任先の越中で、庭の桃の花を見て詠んだもので、歌中からはとても明るくて気分爽快、少々あたたかい風さえ吹いてい

るようにも感じます。

感受性の乏しい皆様も、花屋さんででも桃の枝を買って来て、部屋で見守っていると、やがて咲き出して心豊かな気分になりますよ。⑥

2019.03.10
かわいそうな蓑虫(みのむし)
テーマ:境内

 

蓑虫のいのちふくらむ風の中 宇多喜代子

いよいよ新芽萌え出す準備をしているのか、木々の梢は全体に赤味を帯びてきました。

その先の方で蓑虫が風に揺られています。

最近地域によってはこのミノムシが少なくなって、絶滅危惧種に指定されている所もあるとか。

蓑を着ているような姿なので、こう呼ばれていますが、別名を「鬼の子」とか「父乞虫(ちちこいむし)」などと称されて、少々気の毒な気

がします。

『枕草子』43段に虫は「みのむし、いとあはれなり。鬼の生みたりければ親に似てこれもおそろしき心あらんとて、親のあやしききぬひ

き着せて、・・・風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、ちちよ、ちちよ、とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり」とあります。

このミノムシを鬼の子であるとして、親は子をうとましく思い、きたない衣をかぶせて、秋風の吹く頃には戻ると言って逃げた。子はその

言葉を信じて、「ちちよ、ちちよ」と鳴いていると言うことです。

風に揺られるミノムシに近づいて、本当にそう鳴いているのか、耳を澄まして聞いてみようと思います。⑦

2019.03.08
金色のほとけ様
テーマ:境内

いよいよ当神宮周辺の山の辺の道は、陽春の前奏曲を奏で出してきました。

紅・白梅が一斉に咲き匂い、その下では菜の花が輝き、より一層のアクセントをつけて、まさに萌え出ずる春になりにけるかもです。

「記紀」にも菜の花のアブラナ科の「おおね」として大根やかぶらなどが登場しています。菜の花とは一般にはアブラナ類の花、すべてを

指しています。

この菜の花で思い出すのが、かの有名な千利休が秀吉に命じられて自刃(じじん)する時、最後にその場にいけた花が、梅や椿や桜などの上

等な花ではなくて、野辺に咲く菜の花だったと言われています。

この日が天正19年(1591)2月28日で、三千家ではこの利休忌に追善の茶会が催されています。

今は新暦3月27日表千家、裏千家では28日で、この日まで菜の花は挿さない決まりになっているそうです。

70才の年老いた利休の目には、まばゆい陽光の差し込む菜の花はきっと光り輝く金色の阿弥陀様に見えていたかも知れません。⑧

2019.03.06
春光
テーマ:境内

 

春光とはただ単に春の日光のことだけではありません。

明るくやわらかな日差しが降りそそぐ、うららかな春の眺め、春の景色をも指しています。

春の色、春の匂、春望、春景どれも秋にはない暖かくなることが確約された安心感と伸びゆくのどかな景が余けいに心をゆったりとさせま

す。

3・4月は社会的にはなかなかゆったりする期間ではないかもしれませんが、自然界は厳しい寒さを乗り越えて、明るいやわらかな風が吹

きわたり、映る景色はまばゆく明るくて、力強く輝く陽光は希望を感じさせ、青春の息吹がわき上がってきます。

晴れわたった日には、忙しさに心をうばわれることなく、十分に春を楽しみたいものです。⑨

うれしさは春のひかりを手に掬ひ 野見山朱鳥

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