石上神宮フォトログ 山の辺の杜から
2018.05.20
竹の秋
テーマ:境内

 

境内は常緑樹、落葉樹をはじめ、林床には草木が生育、竹の林もあって早春には筍(たけのこ)がたくさん生え出てきます。

いよいよ掘り出すぐらいになると、猪がやってきて食すると言う腹の立つことがたびたびあります。

竹の子は漢字の筍が示すように一旬(いちじゅん)、つまり10日で竹になると言われ、地上に顔を出す直前のものが美味とされ、食通の猪

はこの時期のものしか所望しないみたいです。

今頃になるとまだ皮をつけたまま、随分高く成長しています。

やはり相当の栄養を必要とするのか、周りの竹の葉は黄ばんで、中には強風に吹かれて飛び散っています。

これを見立てて、俳句の世界では竹の秋と称し、同じく麦の秋と言うものもあります。

今月の話題は緑ばかりなので、少々へそを曲げて秋を登場させました。

「竹の秋」はすでに江戸時代中期頃の書物に載せられていて、万象新緑となる情景の中で黄ばんで精彩を欠いている竹を見て秋を用いたも

のと思います。

麦秋も江戸中期には出典していて、いつの世も感性鋭く、うまい表現をする御仁(ごじん)はいるものです。

2018.05.17
擬宝珠の刻銘(ぎぼしのこくめい)
テーマ:境内

 

石上神宮の拝殿は社伝によると永保元年(1081)、白河天皇が当神宮に伝える鎮魂祭(ちんこんさい)の斎行の場として、宮中の神嘉殿(し

んかでん)を寄進されたもので、最古の拝殿として国宝に指定されています。

現在までこの建物の保存維持のためにたびたびの修理が行われていて残っている棟札などによって、中世末から江戸時代末にかけては、文

明2年(1470)をはじめとして、安政6年(1859)まで大きく10回行われていたことがわかります。

天保14年(1843)には、拝殿の外側を取り巻く板敷きの縁(えん)の修理のあったことが、擬宝珠(ぎぼし)に残っています。

「天保十四癸卯年九月吉日 布留社」とありその下には「鋳物師 京大佛 井筒屋 武兵衞」と読めます。

のみで鮮やかに刻まれた文字は時代を感じさせない新鮮さがあります。

2018.05.15
定家葛の花(ていかかずらのはな)
テーマ:境内

この時期、境内では上方で木にからみついて、5つに分かれプロペラ状の白い花を数多く咲かせ、遠目に見ると白いかたまりに見える正

体は、定家葛の花です。

古くは真拆(柾木)の葛(まさきのかずら)と呼ばれ、神事に多く用いられていて、天鈿女命(あめのうずめのみこと)が天岩戸(あめのいわと)

の前で踊った時、頭髪の飾りにしたのが、まさきのかずらであると言われていて、『万葉集』にも出てきます。

平安時代の歌に盛んに用いられていて、『古今集』巻20、神遊びの歌に「深山にあられ降るらし 外山なるまさきのかづら色づきにけ

り」とあって、秋に葉はツヤのある赤色となります。

花はすごくいい香りがするそうですが、高所にあるのでどのような香りなのか不明。

この花はやがて実になりますが、その形がなんと細長くて20センチ程の丸い箸状で、想像を越えるその形の変身ぶりに妙な感動がありま

す。

これもやがて11月頃にはサヤが裂けて、その中から長い白毛のある種が飛んでいるのを見つけると、かなり変貌した定家さんに三度の妙

な感動が起こります。

2018.05.11
新樹てんこ盛り
テーマ:境内

「夏山は目の薬なるしんじゆかな」季吟(北村季吟・江戸時代初期の俳人)

初夏、若葉の青々としたみずみずしい緑におおわれた木々を「新樹(しんじゅ)」と言い、俳句の世界では季語となっています。

『滑稽雑談』に「新樹は四方の木ずえ青みわたりて、木々の色もみな薄翠(うすみどり)、しげき山下もいとど闇くなりて、月も漏り来ず、

むらさめも音ばかりして、露も落ちぬなどよむべし・・・」とあり、江戸時代前期にはすでに使われていて、新樹と言うわりに決して新し

い語ではありません。

この時期境内は晴れの日も雨でも曇でも、四方八方いたる所、日々新しい緑が生まれいでて、ミドリ競演中、まさしく緑塗り立て、てんこ

盛りとなっています。

2018.05.08
緑滴(したた)る
テーマ:境内

 

早くも奄美・沖縄地方が梅雨入りしたという発表があり、例年より梅雨前線の北上が早いそうで、今年の入梅は全国的に早いらしい。

ここ2、3日はそれを思わせる如く雨が断続的に降っています。

境内の伸びやかで美しいモミジはこの水を得て、なおやさしくやわらかに見えてきて、ミドリの歌を美声で奏でているようです。

秋山は明浄にして、粧(よそお)うが如く、いま時分の山は蒼翠(そうすい)として、滴る如くと言われています。

連日雨となり鮮やかさがあふれるばかり満ち満ちて美しいのが滴るで、当方は別に美しくもなく冷汗で滴るぐらいです。