石上神宮フォトログ 山の辺の杜から
2018.11.15
朝日に匂う
テーマ:境内

 

列島の北の方ではもう冬の知らせとなる初雪が報道されていましたが、当地はその前の紅葉がまだまだ先のことで、境内のモミジの先端が

少々色づいた程度で、12月上旬にやっと見頃を迎えそうです。

『万葉集』にモミジの宴で全山黄葉した山の色の美しさをたたえて、「わが背子(せこ)が 白たえ衣 行き触(ふ)れば にほいぬべくも

もみつ山かも」(2192番歌)と詠われていて、いとおしいお方の白い衣が通るときに触れたら、丹色(にいろ)に染まりそうに美しくモミ

ジした山であることよ、とあって、「に」は「丹」で赤色、「ほ」は「秀・穗」で表面に現れることで、「にほう」は丹色が美しく浮き出

ることを指しています。

後にこれより香りがほのぼのと立つ意に変化したとか。

それでも現代では「におう」と「かおる」ではやっぱりにおうは少々あやしい臭気が立っているようで、かおるが上品そう。

まあこれから美しくにおう山を楽しみにしたいものです。

2018.11.12
ねんねんころり
テーマ:境内

 

境内にはカシ(樫・橿)やナラ(楢・柞)・シイ(椎)などの実のなる樹木も多く、幹廻りが4mを超えるイチイガシも立っていて、晩秋のこの

時期、風が吹こうものなら、その実が一斉に落ち、廻廊ほか銅板葺きの屋根に当って、バラバラと驚くほどの大きな音が響き渡ります。

この実は何の疑問もなく小さい時から団栗(どんぐり)と言ってきたが、よくよく調べると団栗とは、カシ、クヌギ、ナラなどブナ科の実の

総称で、一種類に限定したものではないらしい。

『万葉集』にドングリは「つるばみ(都流波美・橡)」と出ていて、6首以上詠まれていますが、何れも実のことではなくて、実や下のかさ

を煮た汁で染めた地味な濃いねずみ色の衣を指しています。

ちなみに漢字では団栗と表記、団は円と同じ丸いと言うことで(団扇=うちわに同じ)、栗の実のように小さくて団(まる)いので、団栗と書

いて、どんぐりと呼んだらしい。

  団栗の寝ん寝んころりころりかな 一茶

2018.11.10
何の花?
テーマ:境内

 

この時期になると、境内の大銀杏の横に生える木に白やや黄色の5弁の花が、かたまって咲き出してきます。

見た目には決して美しいとは言えませんが、少々甘い香りが漂い、晩秋から初冬にかけて結構長期にわたって咲き続けます。

花によほど関心がないと意識することもなく、あえてその木の名前を知ろうとする気も涌きませんが、やがて翌年の5、6月頃には黄・橙

色の実ができます。

この果実は店先で箱に入って売られていて、美味しくいただけますが、内には黒褐色の大きな種があって、食味、食思が少々損なわれま

す。

さてこの木は何かわかりましたか。

『万葉集』には1首も詠われていないので当時はなく、901年の『日本三代実録』、918年の『本草和名』ほか平安時代以降多くの文

献に出てきます。

実(み)はカロテンが豊富で、果物の中ではベスト3となり、疲労回復・食欲増進、葉はタンニンがあり、せき止め・皮膚病、がんの予防に

もなるそうです。

その実がなるまで9年待たないといけないそうで、俗諺では「桃栗三年柿八年枇杷は九年になりかかる」とか。

2018.11.06
また現れぬ帰り花
テーマ:境内

 

今秋は夏の相次ぐ台風によることもあるのか、サクラ・タンポポなどが時節はずれに花を咲かせているのが話題になっています。

これを帰り花・帰咲(かえりざき)・忘花(わすればな)・狂花などと称して、俳句の世界では結構好まれています。

この現象は決して今年に限ったことではなくて、すでに『日本書紀』に出ており、履中天皇冬3年11月6日のこととして、履中天皇が皇

妃と市磯池(いちしいけ)に船を浮かべて、楽しんでいると盃に桜の花びらが散り入った。

天皇は怪しまれて、「この花、非時(ときじく)に来たれり。それ何処(いづこ)の花ぞ。汝(いまし)自ら求むべし。」(この花は咲くべきでな

い時に散ってきた。どこの花なのか。お前が探してきなさい)

そして、臣下は花を探し出し天皇に奉った。

この珍しいことを喜んで、宮の名を磐余若桜宮(いわれわかざくらのみや)としたと記されています。

履中天皇は当神宮と関わりが深くこれより前、皇太子の時争いがあり、石上振神宮に避難されたことが記載されています。

小春日和に、美しい妃はがまんすることとして、帰り花の桜花を盃に浮かべて、一献いただきたいものです。

2018.11.04
初霜の朝
テーマ:境内

 

晴れ渡った夜は冷え込みがきつく、翌日の晴天が約束されていようものなら、たちまちに水蒸気が放射冷却で凍り、野原は一面真っ白にな

ります。

これはまだまだ先のことになりますが、先日初霜が降りました。

初霜は季節の推移を示すに相応しい現象で『万葉集』以来多くの詩歌に取り上げられています。

たしか江戸の歌集に霜は声を出すらしく、寒い朝には「しんしん」と言うらしい。

霜の声は大きいとやかましくて寝てられないので、きっと小さい声です。(でも決して他人には言わないように、)

やはり当地は風光明媚、無垢清浄の地にして、世間より冷え込みが厳しいと思われます。

 初霜の箒目渦の模様に 福原幸子

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